« 啓太の一日 ( 栃餅 ) | トップページ | 啓太の一日 ( ラッセル車 ) »

啓太の一日 ( つくし )

Photo_2
                     啓太の一日 ( つくし )

プァ~ン カタン、カタン カタン、カタン
「 啓太、危ないから もっと こっちに来とき 」「 はぁ~い 」
今日は 母ちゃんと鉄橋傍に在る土手に来ていた
昨日、夕食を食べ終わると 母ちゃんが
「 啓太、もうそろそろ つくしが出てる頃やから 明日はつくし採りに行ってみようか 」
「 うん 」「 行こう、行こう 」
つくし自体は其処此処に生えているが 大量に取りたいならこの場所が良いらしい
啓太は 電車の過ぎ去った 線路に耳を当ててみた
「 啓太、あっちに有る 踏み切りが鳴ったら 線路から離れるんやでっ 」「 うん 」
母は そう言いながらも 然程 心配はしていない
だって 次の電車が来るまで 一時間以上有るのだから
この単線鉄道は貨物列車を含めても 一日にせいぜい10~12本の列車が走る程度なのだ
カタンカタン、・カタンカタン、・・カタン・・・
春の日差しに暖まった線路から 列車の走る音が遠のいてゆく
啓太は スクッと立ち上がると 線路伝いに歩き出した
暫く歩くと 線路は鉄橋に差し掛かったが 啓太は鉄橋の橋梁に見とれながら 尚も歩き出す
しかし 鉄橋に入って5~6メートル進んだ頃 足元から川の流れる音が聞こえて来る
啓太が ふと視線を足元に向けると 枕木の間から 遥か眼下に勢い良く流れる川が垣間見えた
其の途端 啓太の足が震え 一歩も其の場所から 動けなくなってしまう
「 母ちゃ~ん 」・・・「 母ちゃ~ん! 」
「 なんや、啓太、何時の間にそんな所まで 行ってるのや 」
「 危ないから、こっちに帰って来なさい 」
「 動け~ん 」「 しょ~のない 子やね~ 」
母に手を引かれ 要約 土手に戻った啓太が
「 あ~ 怖かった 」「 怖がるなら あんな所まで 行きなさんな 」
「 うん 」
「 啓太、今日は何しに此処に来たのかな? 」「 つくし採りっ、」
「 それで 啓太の採ったつくしは 何処に有るのや? 」
「 うん、今から いっぱ~い採るんや 」
「 そうか~ がんばりやっ 」と 母は 大きな縄カゴを啓太に渡した
「 え~ こんなに採るんか? 」
「 ふきのとうも 採って 入れるんやで 」「 うん わかった 」
啓太は 母の言いつけ通り 一心不乱に つくしを採り始める
半時もしない頃 母ちゃんが ぽつりとつぶやいた
「 啓太、置石って知っとるか 」「 う~んぅ 知らん 」
「 昔、啓太と同じ位の男の子が 線路に石を並べて遊んでいたそうな
                       其処へ 電車が遣って来て 」
「 キーッ ギャー グワシャーン 」
「 えっ、どうなったんや 」
「 電車は 男の子の前で 大きな音を立てて横倒しに成ったんや 」
「 そんなスピードで ひっくり返ったら 中の人は如何なると思う? 」
「 大怪我するっ 」
「 怪我どころか 死んでしまう人まで出てしまうんやで 」
「 男の子は 怖くなって 家に逃げ帰ったんや 」
「 だけど 夜に成ると 頭から血を流したゆうれいが 」
「 痛いよ~、痛いよ~、痛いよ~ 」
「 次の日も 又次の日も 痛いよ~、痛いよ~、痛いよ~ 」
「 毎晩、男の子の枕元に来る様になったんや 」
「 男の子は 泣きながら、もうしません、ごめんなさい、って謝ったけど 」
「 次の日も やっぱり 痛いよ~、痛いよ~、痛いよ~ 」
「 そやから 啓太も 置石は絶対してはいけないんやでっ 」
「 うん 僕は そんな事 絶対の絶対せえ~へん 」
「 そゃなっ、啓太は良い子やさけ 大丈夫やなっ 」
「 さてと、啓太、いっぱい採れたかな~ カゴを見してみっ 」
しかしながら 啓太は今の幽霊話を想像して 未だ凝り固まっていた
「 啓太、どうしたんや? 」「 う、うん 」
「 こんだけ有ったら 良いやろ 啓太、そろそろ帰ろっか 」
母はカゴを背負うと 未だ幽霊話に入り込んでいる 啓太の手を取り 家路に附いた
・・・
「 ただいま~ 」「 父ちゃ~ん、つくし、いっぱ~い採ってきたよ 」
最早、すっかり幽霊話なぞ 忘れている啓太であった
「 啓太、卓袱台に新聞紙を広げて つくしとふきのとうを分けて頂戴 」
「 うん、分かった 」
母は せかせかと動き回り 台所からザルを持って来ると
「 ふきのとうは此れに入れて つくしは此処で頭と袴を取るんやで 」
「 母ちゃん、袴って? 」
「 此処のギザギザの所にゴミが挟まってるから これを捲って取ってしまいうんや 」
「 ふ~ん 」「 それで 全部取った 茎をこのザルに入れといてちょうだい 」
「 母ちゃんは 台所で お湯を沸かしてるからね 」
頭と袴を取り去った つくしは 元の半分以下の量に成ってしまった
「 母ちゃん 随分少なく成っちゃったよ 」
「 そうやね 此れをお浸しにしたら どんぶりに一杯も無いかもしれんね~ 」
・・・
其の日の夕食は 少し苦味の有るふきのとうのテンプラとつくしのお浸しが出てきた
・・・
未だ 朝晩は冷え込む気温の中 布団に潜り込み 眠りにつくと
夢を見た 流石に幽霊は出てこなかったが
目の前で電車が 大きくひっくり返ったと思うと
自分に向ってくる夢に 布団の中で身体をバタバタと動かす 啓太であった

 

 

 

 

     ↑ブログトップへ

 

« 啓太の一日 ( 栃餅 ) | トップページ | 啓太の一日 ( ラッセル車 ) »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/579411/56786028

この記事へのトラックバック一覧です: 啓太の一日 ( つくし ):

« 啓太の一日 ( 栃餅 ) | トップページ | 啓太の一日 ( ラッセル車 ) »

2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

その他の記事

カテゴリー

  • お仕事
  • グルメ・クッキング
  • コラム
  • 家ごはん
  • 日記
  • 日記・コラム・つぶやき
  • 自作小説
無料ブログはココログ

ブログ