« 順次更新・今日のいただきま~す ① | トップページ | 啓太の一日 ( 自転車 ) »

啓太の一日 ( 海 )

 

                       啓太の一日 ( 海 )

Photo_10

「 啓太ちゃん、うちの茂雄と海にでも 行って遊んでおいでね 」
「 茂雄~ 」
「 なんや~ 母ちゃん なんぞ用か? 」
「 啓太ちゃんを 海に連れてってやんね 」
「 うん、ええよ~ 」
この日 啓太は 父の仕事先である 海沿いの網元さんの家に一緒に来ていた
「 お前、啓太ちゅうんか? 俺は戸田茂雄、××小学校の六年生や 」
「 啓太は 何年生なんや 」「 一年生 」
茂雄は 自慢げに 啓太に 真新しい巨人軍の帽子を見せながら
「 茂雄ちゅうのは 長嶋選手と同じ名前なんやで
    そやから この帽子も 此間 父ちゃんに買って貰ったばっかりなんや 」
「 ふ~ん、茂雄兄ちゃんは 野球をやるんか? 」
「 当たり前やんか、サードで三番バッターなんやで 」
「 すごいんやな~ 」
「 啓太は 野球するんか? 」
「 未だ、遣った事無い、」
「 まだ一年生やから無理ないか~ 」
「 又 今度、家に来れば 何時でも 野球を教えたるよ 」
「 ほんまか~、約束やでっ 」
「 でも、今日は母ちゃんが 海に連れてってやれって
             言うとるから 今日は 海に行くでぇ~ 」
「 うん 」
海岸に出ると 茂雄は 砂浜伝いの岩山に どんどん登って行く
「 茂雄兄ちゃん、こんな所を登るんか~ 」
「 なんや 啓太、怖いんか? 」
「 う、ぅん 」
啓太は 言葉を濁し 岩肌にしがみ付きながら 後を追った
やがて、大きな岩山を越えると 視界は一気に広がり
       ごつごつとした無数の岩に囲まれた 岩浜に出た
二人は一畳程度の岩に飛び移ると
「 啓太、ほら、此処ん所、覗いて見ろ 」
言われるまま 啓太は 岩から頭を突き出して覗き込んだ
眼下には 青とも緑とも言い様の無い 吸い込まれそうな海が映し出されている
「 啓太、帽子を持っててくれ 」
茂雄にとって 野球帽が 如何に大事かを物語るように
ランニングシャツと半ズボンは 無造作に岩場の上に脱ぎ捨てると
ザバーン
大きな水しぶきを上げて 海に飛び込み 岩陰に潜ってゆく
バシャ、バシャ、バシャ、
「 啓太 」
バシャーン
茂雄が 泳ぎながら 此方に何か黒い物を投げつけた
啓太は 何が何だか判らず 放り投げられた物を 只、只、凝視する
「 もうひとつ 」
バシャーン
バシャ、バシャ、バシャ
要約、啓太の居る岩に這い登った茂雄に
「 茂雄兄ちゃん、これ、ウニやろ? 」
「 啓太は 見たことないんか? 」
「 図鑑で見た 」
「 ハハハハッ、じゃあ 食べた事は 」
啓太は 大きく頭を振って見せた
「 まあ、食ってみろ うまいで~ 」
茂雄は ウニを掌に乗せると 素早く手首を返し ウニを岩に叩き付けた
叩き付けられたウニは 棘がひしゃげ中から 橙色をした物が 垣間見える
茂雄は 割れたウニの隙間に指を差込み ウニを二つに割ると   
「 此処ん所を開けて 中の橙色ん所が 旨いんや 」
指で 橙色の所をこそぐと 口の中に放り込んだ
「 ほら、啓太も食ってみろ 」
「 う、うん 」
啓太は 見よう見まねで 受け取ったウニに 指を差しいれ 口に含んでみる
忽ち 口の中には 磯の香りが充満し 芳醇な旨みに満たされてゆく
作者も 店頭に並ぶウニと比ぶべくも無い
      取れたてのウニの味が忘れがたく 思い出してもヨダレが・・・
「 啓太 待ってろ 次はサザエを取って来るさかい 」
「 うん 」
バシャーン
サザエは中々見付らないのか 茂雄の姿を見失ってしまった
波の音だけが 啓太を包み
自分が取り残された不安感に苛まれ 恐る恐る 岩の下を覗く啓太の姿が在った
景色を眺める分には良いが
改めて 深い海の底を垣間見ると 自然と岩に掛ける腕に 力がこもる
バシャーン
バシャ、バシャ、バシャ
「 啓太 待ったか? 」
岩に這い上がってきた 茂雄の姿を見て 啓太は思わず笑いながら
「 茂雄兄ちゃん、パンツが・・・ 」
茂雄は 履いているパンツにサザエを入れているのか パンツがデコボコに膨らみ
サザエの重みで 今にもずり落ちそうである
「 網袋を持って来なんだから 仕様が無いだろ 」
「 啓太 俺はサザエを持ってるから
         啓太は 俺の帽子を被って
             シャツとズボンを持って付いて来てくれ 」
「 うん、わかった 」
二人は 其々の荷物を抱え 慎重に岩肌に沿って 帰ってゆく
茂雄の自宅に着くと
「 母ちゃ~ん サザエ 取って来たから焼いてえ~な 」
「 茂雄 啓太ちゃんを危ない所に連れてってないやろなっ 」
「 別に いつもの所に行っただけや 」
「 啓太ちゃん スイカが冷えとるから
           茂雄と縁側で 食べときなんせ 」
「 うん ありがとう 」 
「 茂雄は パンツ 履き替えといで 」「 は~い 」
チリーン チリチリーン
風鈴の下げられた縁側で ぼんやりと啓太は
      先ほどの海の深い色を思い浮かべていた
「 啓太 スイカや 」
着替えを終えた茂雄は
     スイカを乗せたお盆を挟んで 啓太の横に座り
「 啓太 スイカの種を あの向日葵まで飛ばせるか? 」と
言い終わる 間もなく 茂雄は スイカにかぶり付き
ブブブブッ
「 あれ、届けへん? 」「 もう一回 」
ブブブブッ、ブブッ
「 啓太も 遣ってみろ 」
プッ、プッ、
「 啓太 ちっとも 飛んでへんで~ 」
プッ、プップッ、プッ
ブブブブッ
「 くそ~っ 届け 」
茂雄は 立ち上がると 向日葵の傍まで歩み寄り
ブブブブッ、ブブッ
「 茂雄兄ちゃん そんなんインチキや~ 」
「 そこからとは 言うてへんから 良いんや 」
程無く おばさんが
「 啓太ちゃん サザエが焼けたさかいなっ 」
「 熱いから 気を付けて食べるんやで 」
・・・
啓太は 目の前に差し出された サザエを如何して良いのか解からなかった
「 茂雄兄ちゃん 此れ どうやって食べるんや 」
「 啓太は サザエを食った事無いんか~ 」
「 やって見せるから 良く見てなよっ 」
「 このフタん所に 爪楊枝を刺して
             クルンと回せば ほら 」
「 やってみろ 」「 うん 」
はふ、はふ、はふ、ガブリ、
「 にっ、苦い !? 」
「 あはははっ 啓太はワタが苦手かっ 」
「 そんなら この黒い所を残して食べればええんや 」
ガブッ
「 うん 白い所なら食べられる 」
座敷の奥から 父ちゃんが
「 啓太 そろそろ おいとまするでっ 」
「 茂雄兄ちゃん そんじゃバイバイ 」
「 今度来た時は 野球を教えてな 」
「 おお 任せとけっ 」
其の夜 啓太は夢を見た
茂雄兄ちゃんが バットでウニを次々と海の向こうに カッ飛ばしていた
「 あ~っ 僕、未だ食べてへんよ~っ 」
・・・

 

 

 

     ↑ブログトップへ

 

 

« 順次更新・今日のいただきま~す ① | トップページ | 啓太の一日 ( 自転車 ) »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/579411/58018160

この記事へのトラックバック一覧です: 啓太の一日 ( 海 ):

« 順次更新・今日のいただきま~す ① | トップページ | 啓太の一日 ( 自転車 ) »

2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

その他の記事

カテゴリー

  • グルメ・クッキング
  • コラム
  • 家ごはん
  • 日記
  • 日記・コラム・つぶやき
  • 自作小説
無料ブログはココログ

ブログ