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啓太の一日 ( 火事 )

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                              啓太の一日 ( 火事 )

「 啓太 ! 啓太 ! 」母のけたたましい声に 目を擦りながら布団から起き上ると
母の顔に 赤い光がゆらゆらと映っていた
啓太が窓の方を振り向くと 窓ガラス一面が真っ赤に染まっている
「 あれは、何なん? 」「 お向かいの豆腐屋さんが 燃えてるんや 」
「 啓太は 裏の武田さんまで父ちゃんを連れて 逃げるんやでっ 」
「 母ちゃんは? 」「 母ちゃんも 大事な物を持ったら 直ぐに行くから、」
啓太は 寝巻きのまま 父の手を取り 裏の勝手口から出ると
ウ~、カンカンカン ウ~、カンカンカン ウ~、ウ~、
消防師の激しい怒鳴り声と、サイレンや半鐘が飛び交い 辺りは騒然としていた
啓太は 父ちゃんが消防ホースに 足を引っ掛けないように
                   急ぎながらも ホースの前で立ち止まり
「 父ちゃん ホースが有るから 跨いでや 」
裏の武田の爺ちゃんの玄関先では 爺ちゃんが待っており
「 啓太、早よ 中に入り、」
「 この風なら この家までは 火が届かんと思うが
   危なくなったらもっと遠くまで逃げるから 今晩は寝られんかもしれんで 」
「 うん 」
家の中では 御婆ちゃんがせかせかと おにぎりを作っていた
「 啓太、起こすまで 其処の布団で父ちゃんと休んでなさい 」
父ちゃんが「 武田さん、ご厄介掛けます 」「 うんにゃ、そんな気を使わんでええ 」
啓太は 布団に包まり 横に成って見るが この家の中にもほんのり焼ける臭いが漂ってくる
睡魔と闘いながら 過ごす内 辺りがしらみ始め
台所から遣って来た母ちゃんが
「 啓太、火が消えたそうやから 家に帰って 休んでもええそうやで 」
啓太は うつろな意識のまま「 ふ~ん 」
「 父ちゃんは 母ちゃんが連れて帰るから 啓太は自分で帰れるな 」
「 う~ん 」「 なんや 気の抜けた返事やな~ 」
「 お邪魔致しました 」そう言うと母は 父の手を取り
「 啓太、ちゃんと歩けるんか? 」「 う・ん 」
三人は、消火に使った水の為に ぬかるんだ道を 足元に気を付けながら 家路についた
啓太は、家に着くなり 緊張がほぐれたのか 布団に潜り込むとすぐさま寝息を立てる
啓太が目覚めたのは 昼近くであった
バタバタと服を着替え 玄関から外に出ると 未だ焦げ臭いにおいが漂い
向かいに有った筈の 豆腐屋さんは 少し突き出た黒い炭を残し 周りをロープで囲っている
焼けてしまった 豆腐店は 半年前から地ならしをして
一週間程前に オープンしたばかりなのだ
オープン初日には 啓太も 中の様子を見せて貰い
     タイル張りの水槽に 沢山の豆腐が浮んだ風景は 壮観であったが
                      今では其の浴槽さえも見当たらない
ロープ際に スミおばさんと勇作兄ちゃんを見つけ 声を掛けた
「 勇作兄ちゃん、」「 おお、啓太 」
スミおばさんが「 うち家も 啓太ちゃんの家も 燃え移らんで良かったけど・・ 」
「 ほんま、えらい火事やった 」
「 豆腐屋さんは燃えてしもうたけど 豆腐屋さんの家族も全員無事でよかったわ 」
この豆腐屋は 啓太の家から道を挟んで 真向かいに有り
小川を挟んで 隣には 勇作兄ちゃんの家が有る
        従って もし風が強ければ 類焼はまぬかれなかったであろう

 

 

 

 

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