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啓太の一日 ( かまくら )

Photo「 おはようございます 」 啓太の元気な声が 七木家に響き渡る
[ 啓太 ] ・「 勇作にいちゃん おはよう 」
[ 勇作 ] ・「 今日は雪降ろしするから 終わるまで遊ぶことは 出来んでー 」
      「 啓太は 家に帰って 雪おろしが終るまで 宿題でもしてろ 」
勇作からの いきなりの先制パンチであったが それにもめげず
[ 啓太 ] ・「 僕も 手伝う ! 」と言い出すと 
[ 勇作 ] ・「 啓太はちっこいから まだ 駄目や ! 」と間髪入れず 強い口調で拒否された
土間で 藁を打っていた 重蔵じいちゃん( 七木重蔵 )が 口を挟んで来た
[ 重蔵 ] ・「 ちっこい啓太が 雪の下敷きにでもなれば プチッと潰れるかもしれんな~ 」
プチッと潰れる事は無いであろうが 大人でさえ 屋根雪の下敷きになれば タダでは済むまい
たとえば 雪が降り続くと学校の講堂で朝礼の最中に ミシ・ミシと校舎が音を立てる事が有る 
そんな時 不安な駆られた生徒がザワついたり 時には先生の判断で朝礼を中止する事さえある 
雪の怖さは まわりの誰もが当然の様に 解っている事柄である
啓太は もはや引き下がるしか無く 渋々 納得はしたのだが
[ 啓太 ] ・「 勇作にいちゃん 雪降ろしは 何時頃まで掛かるの 」
[ 勇作 ] ・「 後で お前ん家の雪も 降ろしに行くから 午前中いっぱいは掛かるやろ 」
      「 そのかわり 降ろした雪で かまくらを作ったるから
                              楽しみにして 待つとけ 」
啓太は 勇作の魅力的な申し出に すっかり 心を囚われ 夢見心地で
                             七木家を後にするのであった
[ 啓太 ] ・「 ただいま~ 」
      「 かあちゃ~ん 後で 勇作にいちゃん達が 雪降ろしに来てくれるんやてー 」
[ 母 ] ・ 「 そ~かー ほな しょうが湯でも 作っとこか ? 」
毎度の事ながら 鉛筆の頭をかじり宿題をする 啓太の耳に ハシゴを掛ける音が飛び込んできた
外の様子が気に成って仕方なく 遂には家の外に出てしまうのである
啓太が ハシゴの傍まで近寄ると 太一( 勇作の父 )が丁度 ハシゴを登ろうとする最中であった
[ 太一 ] ・「 啓太 危ねーから終わるまで 家の中に入ってろー 」
[ 啓太 ] ・「 かあちゃんが しょうが湯作ったから 持ってくる 」と 
自分の物言いだけを残し 又 家の中に飛び込んで行く
啓太は台所まで入ると 早速 お盆に 水屋から取り出した湯呑茶碗を二つ並べ
まだ出来立てのしょうが湯を ヤカンから溢さない様に 少しづつ注いでいった
湯呑茶碗から立ち込める湯気とともに 辺りいっぱいに しょうがの香りが立ち込める
啓太は好奇をくすぐられ 小声で「 ちょっと 味見 」と湯呑茶碗に手を伸ばしたが
[ 啓太 ] ・「 あちッ 」
残念ながら 出来立てのしょうが湯は まだ熱すぎて 味見さえ出来そうも無かった
啓太は しばらく考えを巡らすと やがて ゆっくりと湯呑茶碗を入れたお盆を持ち上げ
しょうが湯を溢さない様にと慎重な足取りで玄関から外に出た 途端 ! 何を思ったのか
新雪を湯呑茶碗の周りに敷き詰めてゆき ハシゴの傍に居る 太一に差し出した   
Photo_2[ 啓太 ] ・「 しょうが湯 持って来たから飲んで下さい 」
      「 まだ 熱かったから 雪で冷ましておきました 」

太一は 雪の盛りつけられたオママゴトの様な お盆を眺めながら つい苦笑してしまう
[ 太一 ] ・「 ありがとぅ 早速頂くとするかな 」
      「 お~い 勇作 啓太がしょうが湯持って来てくれたから 降りてこーい 」
[ 勇作 ] ・「 今 降りて行くから 待ってて~ 」
勇作の姿は確認することが出来ないが どうやら既に屋根の上に昇っている様である
程無く 勇作は屋根の上から顔を覗かせると 手際良くハシゴを蔦って下に降りてきた
[ 勇作 ] ・「 なんじゃー こりゃ~ 」
勇作も又 雪の盛られたお盆を眺めながら 呆れ果てた顔を作って見せた
啓太は小さな声で「 だって 熱かったやもん 」と言い訳をするのであった
やがて二人は しょうが湯を飲み終ると
太一は「 ありがとう 啓太 美味しかったよ 」と 啓太の頭を ポン ポンと叩く
勇作も「 旨かったー 」と 啓太の頭を ポン ポンと叩き
「 雪降ろしが済むまで 家の中に入って待ってろ 」と啓太に言い付ける
啓太は お盆の雪を払い除けると 言い付け通り 大人しく家の中へと引っ込んだ
台所に戻り 二つの湯呑茶碗を洗い終ると その一つにしょうが湯を注ぎ こたつの上に置き
おもむろに こたつに入って 未だ温かいしょうが湯を 少しづつ口に流し込んでいった
今日は いつも とうちゃんの座る場所に 啓太が陣取っているのだが
啓太の背後から 一仕事終えたのか とうちゃんがこたつの近くまでやって来ては 
不思議な程 自然にこたつの角に手を付け 空いている場所に入り込んだ
啓太はいつも不思議に思う とうちゃんは家の中で よく引き戸にぶつかったりするのに
何故か 人にぶつかった事は無いのである 
目の前で自分をすんなり避けられると 本当に目が見えないのかと 思いたくなるほどだ
[ 啓太 ] ・「 とうちゃん しょうが湯有るけど 飲まへんかー 」
[ 父 ]  ・「 貰おうか 」 「 それと 灰皿も取ってくれるか 」
啓太は湯呑茶碗にしょうが湯を注ぐと 父の前に置き 次に 部屋の隅に置かれた
灰皿、煙草、マッチを 掘りごたつの上に乗せ 父の右の手を取り
[ 啓太 ] ・「 これが しょうが湯 」と言いながら 茶碗に父の手を当てて在りかを付き示す
更には 左手に煙草とマッチを手渡し「 灰皿はここ 」と もう一度右手を取り
腕の位置で 灰皿の場所を覚えて貰う
とうちゃんは しょうが湯を一口啜ると シュボ! と慣れた手つきで煙草に火を着け
灰皿を 自分の目の前まで手繰り寄せると 煙をプカリと吐いた
こたつに入り しょうが湯を飲みながら なんだか気だるい時間を過ごす二人の耳に
 ドサ・ドサ と重く低い音が響き渡る
[ 啓太 ] ・「 今 勇作にいちゃんと太一おじさんが 屋根の上から雪降ろししてるんやー 」
      「 僕 さっき 二人にしょうが湯を持っていったんやでー 」
[ 父 ]  ・「 そう~かー ありがとーな 」   
      「 いつも七木家の人達には 世話になりっぱなしやなー 」
父は しょうが湯をゆっくりと飲み干し 再び煙草を静かに燻らすと また ぽっりと口を開いた
[ 父 ]  ・「 啓太が まだ生まれる前の事やけど 大雪が降った事が有ったんや 」
      「 あの時は 二階の窓から出入りする始末やったし 」
      「 雪降ろしも出来ず 雪上げをするばかりやった 」
[ 啓太 ] ・「 雪上げって なんやのん 」
[ 父 ]  ・「 雪を落とす所が無いから 大黒柱の有る屋根の天辺に 雪を積み上げるんや 」
[ 啓太 ] ・「 ふ~ん そんだけ雪が有ったら かまくら いっぱい作れるね 」
[ 父 ]  ・「 そんな事を喜ぶんは子供だけや 父ちゃんなんぞは 
                 雪の重みで家が潰れやせんかと心配でならんかったわい 」
啓太は 父の話を聞きながらも それでも 
             頭に浮かんで来るのは かまくらがいっぱい並んだ情景であった

外から聞こえてくる雪を落とす音が聞こえなくなると 玄関から大きな声で
[ 勇作 ] ・「 昼めし食ったら かまくら作るから待っとけよー 」と声を掛ける
其の言葉に呼応する様に 啓太も台所の母に向かって
[ 啓太 ] ・「 かあちゃーん お昼ごはん用意して~な 」
[ 母 ] ・ 「 そないに 急かすんやない 急ぐんやったら 啓太だけ先に食べるかー 」
[ 啓太 ] ・「 うん 」
お昼ごはんを終え 啓太が玄関先に出て見ると
      家の脇には屋根から下ろした雪が 啓太の背丈の倍ほどにうず高く積まれていた
啓太は この雪山をどうしてくれようかなどと しばらく思案するうちに勇作がやって来た
[ 勇作 ] ・「 啓太、俺一人じゃ中々進まんから 誰か手伝える奴を探してこいや 」
[ 啓太 ] ・「 うん 」軽快な返事と共に いつも通りガッポ、ガッポと歩き出す
啓太は 先ず お寺の境内へと向ったが 生憎 其処には未だ誰も来ては居なかった
辺りを見回すと 境内の垣根の向こうに 緑色のジャンパーが小さく見て取れる
「 雄一 ~っ 」
雄一は 太郎[ 柴犬 ]を散歩させていた
雄一は 啓太の姿を視止めると 雪を跳ねながら此方に走り出し
やがて、啓太の前まで近づくと
ゴッン///☆
「 雄一兄ちゃん やろ 」
「 何べん言えば 判るんや 」
啓太は頭を抱え蹲る 「 いてててっー 」
「 でっ、なんか用なんか? 」
「 うん、勇作兄ちゃんが かまくら作るから 手伝いを捜して来いって 」
「 ふ~ん 何処で作るんやっ 」
「 僕ん家の屋根雪で作ってくれるんやと 」
「 勇作兄ちゃんの頼みなら しょうがねーか 」
「 孝介も誘って 後で行くから お前は先に帰ってろ 」
「 うん 」
・・・
啓太は帰りがけに 一夫を誘い 二人で勇作兄ちゃんの元へと向った
「 なんや、一夫だけなんか? 」
「 後で 雄一と孝介も来るって 言うとった 」
「 そうか~ 」
「 啓太 其処に有る スコップを取ってくれ 」
「 うん 」
啓太がスコップの近くまで歩み寄ると 突然 足元が崩れ
ドシーン!!
「 あははは 」「 引っかかった、引っかかった 」
勇作の作った落とし穴の下で 啓太は自分に何が起こったか判らず
ひっくり返ったまま 目をパチクリしていた
一夫が穴を覗き込み「 啓太、大丈夫か~ 」
「 うっ、うん 」
「 勇作兄ちゃん!こんなん作ってないで 早よ かまくら、かまくら 」
「 啓太、お前だけ落こちたままでええんか? 」
「 えっ、如何言う事なん 」
「 未だ来てない 孝介達も落としてやんなくていいのか? 」
「 うん、そやな 」
「 そんなら 早よ 綺麗にフタをせなあかん 」「 うん 」
啓太は柴の上に新聞紙を乗せ 軽めの雪を掛けていると
「 啓太、落とし穴作ってるんか? 」
振り返ると 孝介と雄一が立って居た
「 あはははっ、見かっても~た 」「 孝介と雄一を落としたろと思ってたのに 」
「 そんなんに 落ちる訳無いやん 」
「 そやけど えらい深い 落とし穴作ったなー 」
「 作ったんは 勇作兄ちゃんや 」「 そんでもって 落ちたんは僕だけや 」
「 で、俺らも落としたろって 思てたんか 」「 そら 残念やったな~ 」
「 孝介 」勇作が手招きをする
ドシーン!!
「 あははは やった~ 」
「 くそ~っ もう一個作ってたんか 」
「 あははは へへへへっ 」
「 雄一っ、油断するな 未だ有るかもしれん 」
「 もう、無い 無い 」
ドシーン!! 「 グワー 」
穴から出た 孝介が又もや 落とし穴に頭から突っ込んだ
「 あははは 」「 孝介は正直やな~ 」
「 あははは はははっは 」勇作は涙を浮かべながら 笑い転げていた
「 くそ~っ 」
「 すまん、すまん、あははは ははは 」
勇作は笑いを堪えようと必死ではあるが ついぞ 口元が緩む
要約 落ち着きを取り戻した 勇作が口を開く
「 さてと 入り口は俺が掘るから 孝介と雄一は雪をどんどん積んでいってくれ 」
「 一夫と啓太は あっちでスベリ台を作るんやで 」
「 うん 」「 わかった 」
・・・
やがて 完成まじかの かまくらを眺めながら 啓太が勇作に
「 勇作兄ちゃん 窓の穴を開けて~な 」
「 ええけど 雪が降ったら 吹き込んでくんで 」
啓太には 1つの思惑が有った 「 ちょっと 待ってて 」
啓太は 裏の勝手口に 大急ぎで廻り
       昨日から用意していた 水を張った洗面器を逆さまにすると
                丸く凍った中身を取り上げ すぐさま帰ってきた
「 勇作兄ちゃん これを窓ガラスにして~な 」
「 はははは こりゃ 良いなー 」
「 今、付けてやっからな 」
完成した かまくらは 子供たち五人が十分に座れるスペースが有り
                   中々 どうして 立派な物が出来上がった
時間を忘れ かまくら作りに没頭していた 子供たちであったが
いつの間にか 陽も傾き 雪も降り出してきた
「 今日は 此の辺で 又 明日続きをやろうなっ 」
「 うん 」「 バイバイ~ 」「 また明日なー 」「 じゃ~な~ 」

 

 

 

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コメント

cat明けましておめでとうございます。
 かまくら作りですね!昔を思い出します。子どもの頃作って遊びました。
 いつに頃からか、危ないと言われ今は、余り見ませんね!
 雪国の様子が目に浮かびます。懐かしいです・・・
 今年の札幌は、雪が深く鎌倉作りにぴったりです。

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