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啓太の一日 ( 蜂の巣 )

Photo
「 啓太、行くぞ ! 」
玄関の前で 勇作は啓太を促し 今から 勇作が見つけた蜂の巣を取りに行こうと言うのである
実は 今回が二度目の挑戦であった 前回は軽い気持ちで 軽装備のまま実行に移してしまい
散々な結果に終わってしまったのだが
今回は 勇作の意気込みが いでたちからも窺える程であった
勇作の装備内容は まず 麦藁帽子に蚊帳の切れっぱしを被り
だぶつき気味の白いツナギに 軍手と長靴 そして 蜂を燻る為に作った煙タイマツを三本
煙タイマツは 柴にヨモギとドクダミを括り付け 更に回りを藁で捲いた物で
勇作の考えうる 最も臭い煙の出る 独創的な武器である
さて此処で 前回の失敗を思い起こし 事の顚末を話さねば成るまい
勇作の見つけた蜂の巣は 土の中に作られた 地蜂の巣であると聞かされていた
巣のある場所は お寺の裏の雑木林から 頻繁に飛ぶ蜂を追い眺めて
                            巣の入り口を見つけたのだと言う
二人は 半ズボンにランニングといった姿で 爆竹に煙玉花火を携え お寺に向かった 
雑木林の手前には サルスベリの木が生えており
                   その隣のマキの木にはサルノコシカケが生えていた
なんとも奇妙な舞台セットの前まで辿りつくと
勇作は「 啓太は 此処で待ってろ 」と言い
啓太の見守る中 蜂の巣の入り口に向かって 勇んで歩きだした
巣の手前まで近づいた勇作は ポケットから爆竹を取り出し 火を点けたかと思うと
それを鮮やかな程 見事に巣穴に放り込み 一目散で啓太の元へ駆け戻って来た
パン・パン・パンと爆竹が弾ける音が鳴り止むのを見計らい
次に 煙玉を用意して近づく勇作が 煙玉に火を点けた瞬間
巣穴の奥から不気味な羽音を轟かせて 蜂が次々と飛び出して来ては 勇作に襲いかかって来た
[ 勇作 ] ・「 うわー 」 「 あいたー 」
            「 啓太 逃げろー 」 「 目 狙われっから 薄目開けて走れー 」
二人は必死で 走る 走る 小川を飛び越え 田んぼの畦を踏み崩し
息も絶え絶えに ようやく七木家の土間に飛び込んだ二つのイガグリ頭は もはや凸凹であった
居間にいた[ 勇作の父 ]太一が ふたりの騒ぎを聞き付けて 引き戸から顔を覗かせた
[ 太一 ] ・「 どうしたんやー 」
[ 勇作 ] ・「 蜂に刺されてしも~た 」
いつもなら真先に騒ぎ出す啓太の筈であるが 蜂の毒に当てられたのか いまいち反応は鈍かった
[ 太一 ] ・「 ちょと待っとれ 」
しばらくすると 太一が小皿に入った液体と脱脂綿を持って現れ ふたりの頭に塗って行く
[ 啓太 ] ・「 お酒 ・・・ 」
[ 太一 ] ・「 ああ さっき一杯やってたからな~ 」
それを耳にした勇作は 突然「 あー 」と叫び出し                  
「 啓太 来い 」と力任せに啓太の腕を引っ張るのである
[ 啓太 ] ・「 なん なん 」
[ 勇作 ] ・「 しょんべんや しょんべん塗られたんや 」
[ 太一 ] ・「 これが一番効きよるんやがな~ 」
表の井戸に啓太を引き連れて行くと 勇作は「 水 」「 早よ! 水出せ 」とせっつく
未だ緩慢な啓太に 手押しポンプ[ 通称 ガッチャン・ポンプ ]を動かせと言うのである
啓太は言われた通りに ポンプのハンドルを上下に何度も動かすのだが ちっとも水が出て来ない
Photo_2[ 勇作 ] ・「 あ~ も~ 」
      「 呼び水しな いかん 」と言うと
汲み置きのバケツ水を ポンプのピストン部に注ぎ入れて「 もう一度 」と喚く
啓太は渋々と言った表情を浮かべ ハンドルを動かし出すと 今度は勢い良く水が流れ出てきた
待ってましたとばかりに 早速 勇作は暴れる様に 自分の頭を水で洗い流すのであった
[ 勇作 ] ・「 啓太 交代や 」
啓太は未だ緩慢な動きで 流れる水の中に頭をあてがうと ゆっくりと洗い流しだしたが
水の冷たさを感じる事も無く 頭がカッカと燃えている様な感覚を消し去る事は出来なかった
そんな こんなで 思い出したくも無いほどに前回はしたたか痛い目を見た 啓太と勇作であった
「 今日は此処で待ってろ 」
二人がお寺の境内に入ると 勇作は啓太を ブランコの傍で待って居る様にと言い渡し
意を決した面持ちで 一人蜂の巣の有る方角へと歩き出した
啓太がひとり ブランコの傍でブラブラしている所へ 孝介と雄一がやって来た
この二人は同じ学年と言う事もあって いつも一緒につるんでいる
[ 啓太 ] ・「 孝介, ブランコでどこまで飛べるか競争しよう 」
[ 孝介 ] ・「 孝介にいちゃんとか呼べんのか お前はいつも俺達の事を呼び捨てにしよる 」
[ 啓太 ] ・「 だって にいちゃんは勇作にいちゃんだけやし 君は付けたらあかんのやろ 」
      「 孝介さんやと おっさんみたいやから やっぱり孝介は孝介や 」
[ 孝介 ] ・「 お前には付き合ってられんわ 」
減らず口をたたく啓太に 二人は へき へきと言った表情を浮かべ
[ 孝介 ] ・「 もうええ ! お前と勝負したるけど 俺達に勝てると思っとるんか 」
三人は代わる代わるブランコを振り上げる様に漕いでは飛び降りて 着地点に線を引いて行った
[ 孝介 ] ・「 どうや ! まいったか 」
[ 啓太 ] ・「 一番は 雄一やから 孝介が言う事無かろう 」
[ 孝介 ] ・「 口の減らん奴やなー 啓太は 俺にも負けとろ~が 」
其の頃 勇作はと言えば 蜂の巣の出入り口の前で 煙タイマツに火を付け
芯になる柴が十分燃えるのを確認すると それを手早く 穴の出入り口に突っ込んでいった
三本の煙タイマツを全て入れると 少し離れた落ち葉の間から煙が立ち昇るのを見つけ
勇作は 土でその部分を塞ぎ 両手いっぱいの土を 手のひらに乗せたまま
しばらくの間付近を見回し 蜂が出て来る様な穴が残っていないか確かめた
やがて 土の中では煙が充満したのか 地面のあちらこちらから漏れる様に煙が漂ってきた
漂う煙の範囲を見るにつけ 蜂の巣の大きさを つい想像してしまう勇作であった
今回は手早い行動も相まって 予想外に蜂の反撃に遭う事が無かった
後は時間を掛けて 煙に燻された蜂が弱るのを待つだけだと確信した勇作は 
満足げな表情を浮かべ 啓太の待つブランコに向かい歩き出した
[ 啓太 ] ・「 勇作にいちゃん もう終ったんかー 」
[ 雄一 ] ・「 勇作にいちゃん そんなかっこうして 何してたん 」
[ 勇作 ] ・「 雑木林の中に有る蜂の巣を 煙で燻して来た所や 」
      「 もう暫く待てば蜂も弱るやろから そしたら 蜂の巣を掘り起こしに行く 」
      「 あっ ! しもう~た 鍬を持ってくるのを忘れた 」
[ 孝介 ] ・「 そんなら 俺が 和尚さん処で借りて来る 」
[ 勇作 ] ・「 後で 孝介も蜂の巣 掘り出すのを手伝うか ? 」
[ 孝介 ] ・「 それは 勘弁や 」
やはり 男の子は一度や二度 蜂に刺された経験が有る為 おいそれとは 話に乗ってこない
しばらくは 勇作も皆と一緒にブランコ遊びに興じていたが
時間が経ちすぎると 蜂が元気を取り戻しかねないと思い 鍬を手にした
やがて 先程の蜂の巣の在る場所に立ち戻ると 辺りを見回した
最早 煙が立ち上る様子も無かった 勇作は巣が在ると思しき所より 少し離れた場所に鍬を入れた
土を掘り起こすと じんわりと土の間から煙が立ち込める 更に掘り進めると
途中で土が陥没した ぽっかりと空いた空洞からは 煙と共に数匹の蜂が姿を見せた
勇作は まだ 蜂たちが飛び立つ元気の無いことを確信すると ここぞとばかり一気に掘り進めた
要約 蜂の巣の全体が露に成ると それは結構な大きさであった
[ 勇作 ] ・「 啓太、雄一、孝介 今なら大丈夫だ こっちきて手伝え 」と大声を上げた
三人は勇作の元へ急いで駆けつける
皆が 勇作の周りに集まると 待ってましたとばかりに 蜂の巣の上層から順番に手渡してゆく
啓太は 初めて見る蜂の巣の白い膜が気になって 膜を摘み取ると 中から蜂がごそごそと出て来た
[ 啓太 ] ・「 うわー 蜂が出て来た 」と思わず蜂の巣を地面に落としてしまう
[ 勇作 ] ・「 啓太、膜の張っている所は もう直ぐ大人に成る奴が入っとるから
                          飛び回る事は無いが 気い付けるんやで 」
[ 啓太 ] ・「 あー びっくりした 」
[ 勇作 ] ・「 皆、俺ん所で分けるから 落さん様に持ってこいよ 」
七木家の土間に入ると 勇作は水屋の中から 皿を三枚取り出しては
[ 勇作 ] ・「 一枚は未だ蜂の格好に成って無い奴を入れて 」
      「 もう一枚は蜂の格好に成とっても 白い奴を入れるんや 」
      「 後の一枚には 黒くて蜂の格好に成っちまってる奴を入れるんやで 」
皆は 各々 蜂の巣からハチの子を摘み出す
[ 勇作 ] ・「 啓太は白い膜の所は残してええからな 後で俺がやったる 」
ハチの子を恐る恐る 摘み出す啓太の様子を見て
[ 孝介 ] ・「 啓太、食べてみるか? 」と未だ蜂の格好に成って無い奴を 目の前に差し出した
啓太は 孝介の指先でウニュウニュしているハチの子を見て 首を振りながら後ずさりする
[ 勇作 ] ・「 啓太は初めてやから 怖いんやろ 」
      「 今、啓太でも食べられる様にしたるからな 」
勇作はそう言うと フライパンを持ち出して ハチの子をフライパンで煎ってゆく
やがて 土間いっぱいに 香ばしい香りが立ち込めると
[ 勇作 ] ・「 啓太、食べてみるか? 」「 うまいぞー 」と言いながら
自分の口の中にハチの子を放り込む
啓太は 少したじろいだが 思い切ってハチの子を口の中に入れた
食べてみると 成る程 卵焼きの様な味がして 美味しかった
[ 啓太 ] ・「 勇作にいちゃん これ美味しいわ 」
[ 勇作 ] ・「 苦労した甲斐が 有ったろー 」
      「 こっちの黒い成虫は 硬いから佃煮にしな 食べられんけどな 」
      「 また 蜂の巣を見つけたら 取りに行こうな 」
[ 孝介 ] ・「 でも 蜂に刺されるのは かんべんや 」

 

 

 

 

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